
話題のAI技術、少しだけ掘り下げます
2025/08/20
ここ数年、ニュース番組やSNSで、AIに関する話題が日常的に取り上げられるようになりました。対話型AIを活用したメール作成や情報収集なども一般的になり、お仕事の効率化のためのツールとして重宝している方も多いのではないでしょうか。AI技術はもはや一部の専門職の人だけが関わるものではなく、今の時代を生きる我々全員が使いこなす技術となってきています。
AI技術が世の中に浸透しつつある今、その仕組みや用語の理解を深めることで、最先端技術をより楽しく使いこなせるようになります。本記事では、ニュースやSNSで耳にするAIに関する話題について、知っておくと少し役立つ3つのテーマに絞って解説します。
AIの「エンジン」と「車体」? - モデルとアプリの違い
CMや広告で耳にする「GPTモデル」や「Geminiのアプリ」という言葉。最初のテーマは、AIの「モデル」と「アプリ」の違いについてです。
OpenAIが提供するChatGPTシリーズやGoogleが提供するGemini は、すべての人にとって直感的にわかりやすい仕様となっています。違いを意識していなくても利用することができるため、AI技術におけるこの二つの用語の意味を理解したうえで利用している方は少ないと思われます。
とても簡単に例えるなら、AIの「モデル」とは車のエンジンの役割で、「アプリ」とは私たちが実際に乗る車そのもの、というイメージです。

モデルとは?-能力そのもの-
「モデル」とは、AIの頭脳にあたる、プログラム本体を指します。インターネット上の膨大な文章や画像データを学習し、質問に答えたり、文章を生成したりする知的処理を担う能力そのものが「モデル」です 。
先ほども例に挙げたとおり、OpenAI社が開発した「GPT-4」や「GPT-3.5」、Google社が開発した「Gemini2.5 Pro」が有名ですが、これらがまさにAIの「モデル」にあたります。特定の製品の名前というよりは、「高性能エンジンのブランド名」と捉えると分かりやすいかもしれません。
アプリとは?-実用に特化した機能の集合体-
一方、「アプリ」とは、その高性能なエンジン(モデル)を使いやすくするため、座席やハンドル、アクセルなどをつけて車の形にしたものです。ユーザーがAIモデルを使いやすくするためのサービスやUI(画面)、機能の集合体のことをアプリと呼びます。
多くの方にとってもはやお馴染みとなっている、「ChatGPT」や「Gemini」と聞いて思い浮かぶあのチャット画面。あれこそが「アプリ」です。私たちはこのアプリを通じて、AIの頭脳である「モデル」にアクセスし、その性能を引き出しているのです。つまり、普段ユーザーが利用しているサービスのほとんどは、「アプリ」として提供されているものといえます。
ChatGPT というアプリ(車体)には、GPT-4o などのモデル(エンジン)が搭載されている。
Gemini というアプリ(車体)には、Gemini というモデル(エンジン)が搭載されている。
提供会社 | OpenAI | |
モデル名 | GPT-4o、GPT-4、GPT-3.5 など | Gemini 1.5、Gemini 1、PaLMなど |
アプリ名 | ChatGPT | Gemini |
なぜこれが重要?
この「モデル」と「アプリ」の関係を理解すると、AI業界のニュースがぐっと分かりやすくなります。
例えば、「〇〇社が、GoogleのGeminiモデルを活用した新しいAIサービスを開始した」というニュースがあったとします。これは、例えると「Google製の高性能エンジン(Geminiモデル)を仕入れて、自社独自の車体(新しいAIサービス)を作って販売し始めた」というニュースです。
このように、頭脳である「モデル」を作る会社と、それを使った便利なサービス、つまり「アプリ」を作る会社は、必ずしも同じではありません。まずはこの モデル=エンジン、アプリ=車体 というイメージを理解しましょう。
視覚を持つAI? - 「マルチモーダル」ってなんだろう
さて、AIの頭脳である「モデル」ですが、近年、急速に進化を遂げています。その進化のキーワードとなるのが、2つ目のテーマ「マルチモーダル」です。
「マルチモーダル(Multimodal)」とは、「マルチ=複数の」「モーダル=様式・形式」という言葉の組み合わせです。AIの分野では、テキスト、画像、音声など、複数の異なる種類の情報を一度に理解し、処理できる能力のことを指します。
これについても、人間の感覚の例で考えてみましょう。
以前のAIモデルは、主にテキスト(文字)の情報だけを扱うのが得意でした。文章で質問すれば、文章で答えてくれる。いわば、耳と口だけでコミュニケーションをとっているような状態です。これはこれで非常に便利ですが、私たちのコミュニケーションは言葉だけではありませんよね。
私たち人間は、相手の表情を見たり、写真やグラフを一緒に見ながら話したり、身振り手振りを交えたりします。つまり、視覚や聴覚など複数の感覚を同時に使いながら、情報をやり取りしているのです。
「マルチモーダルAI」は、まさにこの人間の能力に近づこうとしています。耳と口だけでなく、画像や音声、将来的には動画なども同時に理解できる「目」と、従来持っていた機能である耳や口を合わせて使う複合的な能力を手に入れたAIなのです。

具体的に何ができるの?
マルチモーダルなAIモデルの登場によって、AIの活用の幅は大きく広がりつつあります。
写真で質問する
旅行先で見つけた建物の写真を撮って、「これは何?」とAIに尋ねると、その建物の名前や歴史を教えてくれる。
冷蔵庫の中身を写真に撮って、「この食材で作れるレシピを教えて」と頼む。
デザインの相談をする
作成したプレゼン資料のグラフを見せて、「このグラフをもっと分かりやすく見せるにはどうすればいい?」とアドバイスを求める。
外国語練習のパートナーとして利用する
人間相手だと気後れしがちな外国語の会話練習のパートナーになってくれる。発音をチェックしてくれたり、より自然な語順を提案してくれたりするだけでなく、「イギリス英語のネイティブスピーカーとして会話してください」といったリクエストにも対応してくれる。
このように、これまでテキスト入力が基本だったAIとの対話に、画像や音声といった新しい選択肢が加わることで、より直感的で便利な使い方が可能になります。SF映画に出てくる未来のアシスタントが、少しずつ現実のものになっているような感覚です。
このマルチモーダル化の流れは、先ほど紹介した「GPT-4」や「Gemini」といった最新の高性能モデルが牽引しています。AIの頭脳そのものが、より多くの情報を扱えるように進化しているのです。
みんなで開発?秘密に開発? - 「オープン」と「クローズド」
高性能なモデルが今や「目」や「耳」まで手に入れてマルチモーダルなAIに進化しつつある、というお話をしてきました。最後は、そのモデルがどのような方針で作られているか、という視点でのテーマです。
これには大きく分けて2つの種類があります。「オープン」と「クローズド」です。ここでは「料理のレシピ」に例えて考えましょう。
クローズドモデル
「クローズド」とは、その名の通り、ソースコード等が非公開になっている状態です。
これは、門外不出の秘伝のレシピを持つ老舗レストランのようなものです。 そのレストランの料理は、長年の研究と多額の投資によって生み出された、唯一無二のものです。レシピはトップシークレットで、そのレストランで働く料理人しか知ることはできません。私たちは客としてその料理を注文し、味わうことはできますが、作り方を真似したり、アレンジしたりすることはできません。
代表例: OpenAI社の「GPTシリーズ」、Google社の「Gemini」など
メリット
高性能・高品質: 開発元の企業が責任を持って開発しているため、非常に性能が高く、安定した機能を提供していることが多い
手厚いサポート: 何か問題が起きた時に、開発元からのサポートを受けやすい
デメリット
コスト:利用するには料金がかかる場合が多い
ブラックボックス:モデルのパラメータや学習用データが非公開であるため、「なぜAIがこのような回答をしたのか」という詳細な仕組みは、利用者には分からない。
情報の扱い:入力したデータがAIの学習に使われてしまう可能性もゼロではないため、企業の機密情報や個人情報の入力には細心の注意が必要。

オープンモデル
一方、「オープンモデル」とは、AIの頭脳にあたる学習済みデータやプログラムの設計図などが全世界に公開されており、一定の条件下で誰もが利用、改変、再配布ができる状態のモデルのことです。
これは、惜しみなく熟練のレシピを公開している人気料理研究家のようなイメージです。 そのレシピはインターネットで公開されており、誰でもそのレシピを元に料理を作ることができます。さらに、「もっと美味しくするために、このスパイスを加えてみよう」と自分なりにレシピを改変して、新しい料理としてお店で出すことも許されています。
代表例
Meta社(旧Facebook)の「Llama(ラマ)」シリーズ、アブダビ社の「Falcon」、Google社の「Gemma」※Geminiとは別の軽量オープンモデル
メリット
コスト: 無料で利用できるものが多い。
透明性と柔軟性:プログラムの中身が公開されているため、専門家が見ればその仕組みを理解できる。また、目的に合わせて自由にカスタマイズできるのが最大の強み。
セキュリティ:自社のサーバー内など、閉じた環境でAIを動かすことができるため、機密情報を外部に出さずにAIを利用したい場合に適している。
デメリット
専門知識が必要:基本的に自己責任での利用となり、専門のサポートがない場合が多い。柔軟にカスタマイズできる一方で、導入や運用には専門知識が必要。
品質のばらつき:誰でも開発・公開できるため、非常に多くのモデルが存在する。性能が低いものや、古い技術をベースにしたものもあるため、どれを使うのか選定が難しい。
どちらを使うべきか?
クローズドモデルは、「手軽に最高品質のものを使いたい」という場合に適しています。多くの一般ユーザーや、AI開発の専門人材が確保しづらい企業にとっては、こちらが第一の選択肢になるでしょう。
一方、オープンモデルは、「特定の目的に特化したAIを自社で作りたい」「社内でのセキュリティ要件が非常に厳しい」といった、より専門的なニーズを持つ企業や開発者にとって、汎用性が高く実用的な選択肢です。
このように、AIのモデルには、開発方針の異なる2つの流れがあるのです。
まとめ ~AIの仕組みをもう一歩だけ知ろう~
今回は、AIの「中身」を理解するための3つのテーマについて簡単に解説しました。
これらの知識は、直接的に日々の業務を変えるものではありません。しかし、今後さらにAIの活用が進む中で、「この新しいサービスは、オープンモデルをカスタマイズして作られているんだな」「このAIが画像を認識できるのは、マルチモーダルだからなんだ」というように、その背景をもう一歩だけ深く理解できたら、新しい技術とより賢く、より安全に付き合っていくヒントとなるはずです。
AIは完璧な存在ではありませんので、最終的な判断の責任は私たち人間が持つべきです。その特徴を正しく理解し、便利なツールとして使いこなしていくためにも、まずはその正体を一歩踏み込んで知ることから始めてみてはいかがでしょうか。正しく活用すれば、これからも、私たちの仕事をサポートしてくれる頼もしいパートナーであり続けてくれるでしょう。

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