エッジAIはなぜIoT技術と相性が良いのか?具体的な構成例も紹介

2024/08/08

昨今研究開発が進み、ますます注目されるAI。特に産業分野では、不良品検知への画像認識AI導入の活用事例が次々と生まれています。

AI活用を始めるには、データの運用について検討する必要があり、導入コストやセキュリティなど無視できない事項がたくさんあります。

この記事では、2つの技術「エッジAI」と「IoT技術」のコンビネーションについて、なぜ相性が良いのか、お互いの欠点を補い合っているかについてご説明し、その具体的な実装例についてもご紹介します。

手元で動かす「エッジAI」

AIは、その動作する場所に着目して「クラウドAI」と「エッジAI」の2種類の分類を考えることができます。まずは身の回りのITサービスでも一般的なクラウドAIの特徴についてご説明します。

クラウドAIとは

クラウドAIとは、クラウドサービスのベンダーが所有する環境を借りて動作するAIのことです。 クラウドベンダーとしてはAmazonやMicrosoft、Googleなどが著名で、これらのような企業がAIの物理的な動作環境を提供し、利用者はインターネットを通じて自社のAIをその中で動作させます。

サーバーのような機器を物理的に保有したり、構築したりせずともAIがすぐに安く利用できることが特長で、サーバーの増強もマウス操作だけで行えることも利点の一つです。

また、物理的にサーバーを所有しないことで事故や災害時のリスクを考えなくて良いことも大きなメリットです。

その反面、クラウドAIでは製品の画像などAIに読み込ませる情報を必ずサーバーにアップロードする必要があり、これはしばしば欠点の一つとも捉えられます。

特に社外に漏れてはいけないような情報を取り扱う場合、そのセキュリティが導入にあたっての大きな課題です。通信の傍受や通信障害の対策など、十分な機密性を保てるネットワークやシステム連携を構築しなければならず、また運用にも注意を払う必要があるでしょう。

また、リアルタイムの処理の実現が難しいのもクラウドAIの懸念点の一つです。 処理時間に加え、現場とクラウドの往復の通信にも時間がかかるため、遅延が生じたり、コマ送りのような処理結果となったりすることを許容する必要があるかもしれません。

エッジAIとは

エッジAIとは、クラウドAIとは対照的に、製造ラインなど現場に近い部分で動作するAIのことです。 現場に設置されたコンピュータ上にAIをインストールし、その中で画像認識や推論などの機能を利用します。

エッジAIを動かす機器は旧来よりも豊かな選択肢があり、サーバー室に設置されるようなオンプレミス機器から、手のひらサイズのAI機器まで流通しています。

エッジAIのメリット

AIがその場にいることから、エッジAIは速度やセキュリティに関する懸念は非常に小さくなり、下記のような利点を享受することができます。

  • 現場でそのまま処理
    カメラで撮影した映像は現場を出ることなくその場で処理されるため、リアルタイム処理を得意とします。推論結果のモニター表示やパトランプとの連動のほか、排斥装置を用いることも可能です。

  • データの局所処理
    機密性の高い製造データは工場外に出ることなく、その場で処理されます。これにより、データ転送時の傍受リスクが大幅に低減されます。

  • 最小限のインターネット通信
    一般的にエッジAIはインターネットへの常時接続が不要なため、攻撃の可能性も小さくなります。必要最小限のデータのみを送受信することで、盗聴や漏洩の心配も抑えられるでしょう。

総じて、エッジAIの利点は「手元でAIが動く安心感と信頼性」だと言えるでしょう。 その場で大抵のことが完結するので、速度面でもセキュリティ面でも有利なアプローチなのです。

エッジAIのデメリット

上記のメリットの反面、一般にエッジAIの導入は検討事項が多く、深い知識を要することが欠点として挙げられます。具体的には下記のような場面で困難に遭遇するでしょう。

  • 導入時の検討事項が多い

    AIを動作させるコンピュータはどの程度の性能が必要か?温度や湿度などの環境への耐久性はどの程度必要か?ベンダーはどこであれば信頼できるか?など、その選定には業務内容への深い理解と、専門的な知識の両方が必要となります。

  • AIが高度になるほどにコスト増

    クラウドAIならばワンクリックで従量制の環境が手に入る反面、エッジAIの場合は機器を買い切る必要があります。大規模で高度な推論や生成ができるAIモデルを動かそうとすると、コストは跳ね上がってしまうでしょう。

  • 管理の難しさ

    大規模に導入することを考えた場合、デバイス1台1台を個別に管理することとなります。システムを最新に保ちつつ、アクセス管理や障害対策などを行っていくと、規模に応じて負担とコストは急増します。

一言にまとめると、エッジAIのデメリットは「導入も運用も専門知識が必要で煩雑」とも言えるでしょう。

専門的な知識を持つ社員がいない場合、多くは外注が必要となり、少なくない時間とお金の投資は避けられません。 エッジAIの初導入の場合、サポートが充実したパッケージ製品を導入することがおすすめです。

IoT技術

IoTは、コンピュータ以外の多様なモノまでインターネット経由で繋げお互いに連動させるコンセプトのことで、センサーやカメラ、無線通信技術などはこの範疇にあります。

この中でも、特にエッジAIとの関わりの深い、通信技術について取り上げます。

IoTの通信技術

IoTでの通信には、携帯電話の通信のような広域をカバーする種類の無線通信規格がよく使われます。

IoT技術は厳しい運用環境にも耐えられるように技術開発が行われているため、省電力性や電波のカバー率の高さに重きを置かれた通信技術が多くなっています。

その一方で、通信速度や送受信できるデータ量に制約があるケースが多く、大きなデータのやりとりには向いていません。このため、典型的には、センサーが感知した数値や時間を定期的に数分間隔で送るような使い方が例に挙げられます。

また、有線ケーブルなど既存のインターネット設備に頼れないことも想定されて作られており、必要最小限で独立した通信回線を実現しています。このため、導入の際の初期投資が小さいことも特長です。

IoT技術がエッジAIと相性が良い理由

ここまで紹介した2つの技術はそれぞれ別々に発展しましたが、これらはお互いの長所を活かし合う関係にあると言えます。

長所

短所

エッジAI

手元で処理が完結し、ネット接続が必須ではない

導入も運用も専門知識を要する

IoT通信

低い導入・運用コスト

通信に強い制約がある

クラウドAIは強力なサーバーが手軽に使える一方で、そのためには充実した通信環境が必要となります。

処理速度高速化・通信量削減に成功したエッジAIと、IoT通信の組み合わせは、データ量の制約という短所を克服し、低い運用コストでAIを取り入れられるコンビネーションなのです。

TechSword Visionでの具体的な構成

弊社は上記2つの技術「エッジAI」と「IoT通信」の2つを組み合わせたノーコードAIプラットフォーム「TechSword Vision」を提供しております。

これらの技術の組み合わせの例として、弊社製品での構成をご紹介します。

まず大まかな流れを下記にご説明します。

  1. ユーザー様が作成した画像認識AIモデルは、クラウドからIoT無線通信経由でエッジデバイスにインストールされます。

  2. エッジデバイスは、製造ライン上を流れる製品などのカメラ映像を入力として受け取ります。

  3. カメラ映像をもとに、AIモデルによる処理がエッジデバイス上で行われます。

  4. AIモデルによる処理の結果、お知らせすべきものが見つかった場合、モニター映像やパトランプなどに出力が行われます。

  5. 検知履歴はIoT回線経由でクラウドにアップロードされ、管理用Webアプリケーションから閲覧ができるようになります。

また、TechSword Visionは継続的にアップデートをご提供しており、デバイス上で動くシステムの更新があった際にもIoT回線経由で更新データが配信されます。

続いて、主要な部分についてご説明していきます。

NVIDIA Jetsonモジュールを搭載したエッジデバイス

AIが動作するためのエッジデバイスは、アメリカ NVIDIA社 (エヌビディア) のJetsonモジュールを搭載したものを採用しています。

https://www.nvidia.com/content/nvidiaGDC/jp/ja_JP/autonomous-machines/embedded-systems/jetson-orin/_jcr_content/root/responsivegrid/nv_container_copy_co_702709638/nv_container/nv_teaser_copy.coreimg.100.630.jpeg/1716915911835/nvidia-jetson-orin-nano-developer-kit-2c50-d-2x.jpeg

引用元: 次世代ロボティクス向け Jetson AGX Orin | NVIDIA

NVIDIA社はAI関連をはじめとしたハードウェアを設計・製造しており、Jetsonシリーズはその中でも組み込み・エッジコンピューティング向けの小型なボード (コンピュータ部品) です。

導入時にはJetsonモジュールを搭載したデバイスをベンダーから購入します。

デバイスの大きさは手のひらほどで、端子はUSBポートや画面出力、Ethernetポート、GPIOピン、など充実している場合が多いです。また、モニターとマウスをデバイスに繋ぐことで、普段のPCと同じように操作することもできます。

Soracom OnyxによるIoT無線通信

上でご説明したデバイスは、SORACOMのOnyx (オニキス) というIoTネットワークへのアダプタを接続することで、インターネットとの通信が行えるようになっています。

引用元: Soracom Onyx - LTE™ USB ドングル (SC-QGLC4-C1) - IoTデバイス通販 - SORACOM (ソラコム) IoTストア

SORACOMは日本の企業で、IoT製品に関する様々な製品やサービスを包括的に提供しており、弊社製品のネットワークもソラコム社のものを採用しています。

OnyxはSORACOMが提供するIoT回線に接続するためのUSB機器です。

回線には携帯電話でも使われているLTEが使われており、工場等設置箇所のインターネット設備に頼ることなく無線通信が行えます。

検知時のAIからの出力

TechSword Visionにおいては、AIが検知した際の出力先の例として下記のようなものをサポートしています。

  • モニター: AIが見ている映像を表示し、検知時にはその写真を大きく表示します。

  • パトランプ: 検知時に光でお知らせします。

  • ブザー: 検知時に音でお知らせします。

  • 排斥装置: 不良品等をライン上から取り除くことができます。

  • 管理用Webアプリケーション: 検知した履歴や画像を過去に遡ってグラフで閲覧することもできます。 (この機能はクラウドのためリアルタイムではありません)

AIによる推論処理が遠方のサーバー上で行われるクラウドAIの場合、通信遅延やネットワーク構成などでリアルタイムな出力が難しい場合がありますが、弊社製品はエッジAIを採用することにより克服が可能となりました。

まとめ

手元の機器でAIを動かすエッジAIは、処理がその場で完結するため速度面やセキュリティ面での高い信頼性を持っています。

このため、通信の量は最小限となり、回線の細さが欠点であるIoT回線の採用も可能となりました。

この2つの技術の組み合わせは速度・セキュリティ・コストパフォーマンスなど、多くの面でお互いを引き立て合う良い関係性にあることをご説明しました。

また、この実際のユースケースとして弊社製品の構成について簡単な解説を添えました。

これらの技術を組み合わせた際のイメージがより具体的なものとなれば幸いです。

TechSword Visionのご紹介

本記事でもご紹介した弊社製品であるノーコードAIプラットフォーム「TechSword Vision」は、誰でも自社専用のAIを開発でき、ご自身だけで運用可能であることを強みとしております。

エッジAIの欠点の例として挙げた「技術選定の煩雑さ」についても、AIエンジニアによる丁寧な伴走サポートをご用意しており、不安なくAI導入が行えます。

もし導入のご関心がございましたら ヒアリングの上具体的な構成などをご提案させていただくことが可能ですので、ぜひお問い合わせくださいませ。

また、具体的な価格や導入事例等につきましてはサービス紹介資料をご用意しておりますので、お気軽にご請求ください。

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