エッジAIを利用するメリットと使用例

2024/07/02

近年、幅広い分野において導入がすすみ、ますます注目を集めるエッジAI

処理速度の速さやコストなどのメリットがあるのは知っているものの、「具体的にエッジAIの何が他より優れているのか」また「具体的にどういうシーンで活用できるのか」などのお悩みをお持ちの方も多いと思います。

本記事では、エッジAIを導入した場合の具体的なメリットと、その効果を発揮している実際の使用例を詳しく紹介します。

はじめに

エッジAIとは?

エッジ(Edge)は、英語で末端や二つの線が接する縁という意味を持っています。技術の分野では、エッジコンピューティングやエッジデバイスといった言葉が使われ、エッジAIという概念が登場しています。

エッジAIとは、末端のデバイスやその近くでAIを動作させる技術です。これまでは、デバイスで収集したデータをクラウドやサーバーに送信し、そこでデータの処理を行うのが一般的でした。例えば、異常を検知したり、データを分析して有用な洞察を引き出したりするためには、クラウドやサーバーの力を借りる必要がありました。

エッジAIの登場により、データを収集する感覚器官、データを判断する脳、そして実際に駆動する手足の役割を、一つのエッジデバイスが担うことができるようになりました。これにより、データの収集、処理、判断、そしてアクションの実行を全てエッジデバイスで行えるようになったのです。例えば、工場の製造ラインで使用されるセンサーが異常を検知し、そのデータを元に即座に対策を講じることが可能です。

このようなエッジAIの特徴を活かして、リアルタイムでの判断が必要とされる様々な分野で導入が進んでいます。例えば、製造業では、製品の検品工程にエッジAIを導入することで、リアルタイムに不良品を検出し、効率的に生産ラインを運営することができます。また、小売業の店舗では、消費者の行動をリアルタイムで分析し、マーケティング戦略や在庫管理に活かすことができます。これまで以上に迅速かつ精度の高い判断が求められる環境で、エッジAIを導入することにより様々なメリットが発揮されています。

補足:クラウドについて

クラウドは、インターネットを通じてコンピューティングリソースを提供する技術やサービスモデルを指します。

また、クラウドコンピューティングは、サーバー、ストレージ、データベースなどのITリソースをオンデマンドで利用できるサービスです。ユーザーは必要な時に必要な分だけ使用できます。

クラウド型のAIでは、デバイスなどのセンサー機器からデータを生成および取得し、それをインターネットを経由してクラウドに送信し、処理を行います。

エッジAI の主要なメリット

リアルタイム処理

エッジAIは、リアルタイムでのデータ処理と意思決定を可能にする技術です。

従来のクラウドベースのシステムでは通信遅延が課題でしたが、エッジAIはデバイス上で瞬時にデータの収集、処理、分析を行い、即座に対応できます。

これにより、リアルタイム性が求められる環境で迅速かつ効率的な運用が可能となり、様々な分野での競争力を向上させます。

データ転送量の削減

エッジAIを活用することで、容量の大きな画像やビデオなどのデータをクラウドへ送受信する必要がなくなり、データ転送のためのコストを大幅に削減できます。

例えば、センサーやカメラから得られる大量のデータをエッジデバイス上で処理することで、必要な情報だけを抽出して送信することができます。

これにより、通信回線の帯域の占有を抑えることができ、通信速度の低下や遅延を防ぐことが可能です。特に、リアルタイム性が求められるアプリケーションにおいて、遅延の最小化は非常に重要です。

さらに、エッジAIを使用することで、分散型の処理が可能となり、ネットワーク全体の効率性が向上します。

このため、エッジAIはデータの即時処理と効率的な通信管理を実現する重要な技術となります。

補足:分散型

デバイス単位で処理を行うため、クラウドやサーバーへ処理が集中せず、それぞれで分散的に処理を行うことができます。

主な特徴:

  1. 低遅延:デバイスとクラウドで通信を行わず、現場で処理するため応答が速い

  2. プライバシー保護:センシティブなデータをローカルで処理し、外部に送信しない

  3. ネットワーク負荷軽減:大量のデータをクラウドに送信することなく、ローカルで処理

  4. リアルタイム処理:即時の意思決定や動作が必要な場面で有効

  5. 省電力・省コスト:デバイス単体で処理を行い、通信コストを削減

  6. オフライン対応:インターネット接続が不安定な環境でも動作可能

この手法は、IoTデバイス、自動運転車、ウェアラブルデバイスなど、即時性と効率性が求められる分野で活用されています。クラウドとエッジの適切な組み合わせにより、より効果的なAIシステムの構築が可能になります。

プライバシーとセキュリティの強化

エッジAI技術の利用により、デバイスで収集された貴重な生データをインターネット上に送信する必要がなくなるため、情報漏洩のリスクを大幅に低減することができます。

エッジAIでは、デバイスで取得された生データを直接通信するのではなく、加工された比較的リスクの少ないデータが通信されるため、仮に傍受されても被害を抑えることが可能です。

さらに、データがローカルで処理されるため、クラウドや外部サーバーに依存する必要がなくなります。これにより、クラウドやサーバーへのアクセスが制限され、外部からの攻撃による情報漏洩リスクも軽減されます。特に、機密情報を扱う産業や医療分野では、このようなセキュリティ強化は極めて重要です。

エッジAIの主なデメリット

ハードウェア性能の制限

エッジデバイスの場合、一般的に計算能力やメモリ容量が限られています。AIを動作させる際、クラウドで処理する場合は(ほぼ)無限のリソースを使用できるが、デバイスで処理する場合は十分な処理能力があるデバイスを選定する必要があります。

ソフトウェアの管理が困難

エッジデバイスによってAIを動作させる際、物理的に離れた場所に置いてあればそれらを管理することが難しくなることが多いです。

また、デバイス自体のアップデートなどエッジデバイスの台数分行う必要があり、一律に管理するのが難しいことがあります。

各種業界への使用例

ここからは前述のエッジAIのメリットを活かした使用例をご紹介します。

監視カメラ

建物や大規模施設の安全管理や防災対策において、エッジAIを搭載した監視カメラが非常に注目されています。この技術を利用することで、リアルタイムに異常状態を検知し、迅速に対応することが可能です。例えば、河川や山間部での異常状態の検知、施設内の人数カウント、高速道路を走行する車両のナンバープレートの検出など、さまざまな領域で効果を発揮します。

エッジデバイス上でデータ処理を行うため、通信環境があまり良くない場所でも安定して使用することができます。これにより、遠隔地やインターネット接続が不安定な地域でも、信頼性の高い監視が実現します。例えば、山間部の小さな村や、海上の石油プラットフォームなど、通信環境が厳しい場所でもエッジAIカメラは有効です。

また、エッジAIを活用することで、データのプライバシー保護も強化されます。データがローカルで処理されるため、顔やその他の個人情報がクラウドに送信されることがなく、情報漏洩のリスクを大幅に減少させます。これにより、個人情報の保護が求められる医療施設や学校などでも安心して使用することができます。

さらに、エッジAI搭載の監視カメラは、リアルタイムでのデータ処理が可能なため、迅速な対応が求められる状況でも非常に有効です。例えば、火災や地震などの緊急事態において、瞬時に状況を把握し、適切な対応を取ることができます。これにより、人命を守るための迅速な行動が可能となります。

このように、エッジAI搭載の監視カメラは、安全管理と防災対策において非常に重要な役割を果たしています。リアルタイムでの異常検知、プライバシー保護の強化、通信環境に依存しない運用など、多くの利点があり、さまざまな場所での導入が進んでいます。今後も技術の進化に伴い、さらに多くの分野での応用が期待されます。

レベル3以上の自動運転の実現

レベル3以上の自動運転を実現するためには、多数のセンサーから得られる膨大なデータをリアルタイムで処理する必要があります。これにより、車両は瞬時に適切な判断を下し、安全かつ効率的に運転を継続することができます。エッジデバイスの搭載が不可欠とされているのは、このリアルタイムデータ処理を車内で行うためです。

エッジデバイスを利用することで、データを車両内で直接処理し、クラウドに依存せずに迅速な対応が可能となります。これにより、通信遅延を最小限に抑え、即座に周囲の状況に応じた対応を取ることができます。また、通信環境が不安定な場所でも自動運転機能を維持することが可能です。

さらに、エッジデバイスは、センサーからのデータを集約し、リアルタイムで解析することで、車両の位置や速度、周囲の障害物などの情報を即座に把握します。この高い処理能力と迅速な対応力が、レベル3以上の自動運転を安全かつ効率的に実現するための鍵となります。

補足:自動運転

自動運転は、車両が人間の介入なしに自律的に運転する技術です。この技術は、車両に搭載されたセンサー、カメラ、レーダー、ライダー、および人工知能(AI)アルゴリズムを組み合わせて使用します。自動運転は、運転の安全性を向上させ、交通渋滞を軽減し、エネルギー効率を向上させることを目指しています。

自動運転のレベルは以下のように国際的に標準化されています。

  • レベル0 - 手動運転

    完全に人間が運転します。自動運転機能はありませんが、警告システムや一部の自動化されたアシスト機能(例:緊急ブレーキ)が含まれる場合があります。

  • レベル1 - 運転支援

    車両は一つの自動運転機能を提供します(例:アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援)。人間の運転者が常に監視し、操作する必要があります。

  • レベル2 - 部分自動運転

    車両は複数の自動運転機能を同時に提供します(例:アダプティブクルーズコントロールと車線中央維持の組み合わせ)。ただし、人間の運転者が常に監視し、即座に介入できる必要があります。

  • レベル3 - 条件付き自動運転

    車両は特定の条件下で自動的に運転を行います(例:高速道路での自動運転)。人間の運転者はシステムがリクエストした場合に即座に対応する必要があります。

  • レベル4 - 高度自動運転

    車両は特定の条件下で完全に自動運転を行います。システムが制御する範囲では人間の介入は不要です。ただし、特定の制約(地理的区域や天候条件)があります。

  • レベル5 - 完全自動運転

    すべての条件下で完全に自動運転が可能です。人間の運転者は不要であり、車両には運転装置(ステアリングホイールやペダル)が必要ない場合もあります。

※JASO TP-18004および国土交通省の報道資料(2021年12月11日発表)「自動運転車両の呼称」より https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001377364.pdf

製造業での検品工程

製造業において、エッジデバイスとカメラを活用することで製品の外観検査を自動化することができます。この技術の導入により、従来の手動検査では見逃されがちな微細な欠陥や不良品を正確に検知することが可能となります。特に、AI技術を用いることで、複雑な形状不定形な製品でも高精度な検査が実現します。例えば、曲線や複雑な模様を持つ製品でも、AIはパターン認識能力を駆使して、正確に不良箇所を特定することができます。

さらに、このAIをエッジデバイスに搭載することで、データのローカル処理が可能となり、より高速な検査処理が実現します。エッジデバイス上でリアルタイムにデータを処理することで、クラウドにデータを送信して処理結果を待つ必要がなくなり、検査のスピードが飛躍的に向上します。これにより、製造ライン全体の効率が向上し、生産性の大幅な改善が期待できます。

また、エッジデバイスの利用により、通信回線の負荷が軽減され、データ転送に伴う遅延が最小限に抑えられるため、リアルタイム性が求められる工程においても非常に有効です。特に、大量のデータを扱う場合や、高速な処理が求められる環境では、エッジデバイスの導入は不可欠です。

加えて、エッジデバイスは、データのプライバシー保護やセキュリティの観点からも有利です。データがローカルで処理されるため、クラウドへの依存が減り、情報漏洩のリスクが低減します。これにより、安心してデータを取り扱うことができ、セキュリティ対策の一環としても効果的です。

このように、エッジデバイスとAI技術を組み合わせた製造業での検品工程の自動化は、精度の向上、処理速度の改善、通信負荷の軽減、データセキュリティの強化など、多くの利点をもたらします。今後、ますます多くの製造現場での導入が進むことでしょう。

まとめ

エッジAIは、末端デバイスでAIを動作させる技術であり、従来のクラウドベースのシステムに比べて、リアルタイム処理、データ転送量の削減、プライバシーとセキュリティの強化といった多くの利点があります。

例えば、工場の製造ラインでは、センサーが異常を検知し、即座に対策を講じることが可能です。また、エッジAIを活用した監視カメラは、リアルタイムで異常を検知し、迅速な対応が可能です。

エッジAIの導入により、データの収集、処理、判断、アクションの実行がすべてローカルで行われ、ネットワーク負荷を軽減し、通信遅延を最小限に抑えることができます。これにより、製造業や小売業など、迅速かつ精度の高い判断が求められる分野での競争力が向上します。


ここまでエッジデバイスのメリットや使用例についてご説明してきましたが、それら長所を活かした弊社製品をご紹介いたします。

AIのモデル作成からエッジデバイス(NVIDIA Jetsonシリーズ)へのAIモデルのインストール、運用までをプログラミングや初期設定なしで利用できる製品となっております。

AI検査のデメリットを克服!「TechSword Vision」のご紹介

TechSword Visionノーコードで画像認識AIを開発し、現場の端末であるNVIDIA Jetsonシリーズへワンクリックでインストールが可能、そしてAIの再学習も行えるソリューションです。

専門的な知識やスキルがなくとも、簡単操作によりご自身の手でAIに学習させることが可能です。

AIエンジニアの稼働が必要ないため初期コストも小さく、これからAI検査を始める場合におすすめです。

ご興味がある場合は、ぜひ詳細なサービス説明資料をご請求ください。

【サービス紹介PDFの資料請求はこちら】

また、具体的な導入事例や導入後の流れについても、ご希望に応じて説明させて頂きます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

非エンジニアでも簡単

画像認識AIの
開発・実装・運用を
実現できる
ノーコードAI
プラットフォーム