
省人化だけで終わらせない!検査自動化による品質改善のススメ
2024/07/22
外観検査は、製造業において製品の品質を担保するための重要なプロセスです。従来の外観検査は人手によるものが主流でしたが、AIやマシンビジョン技術の発展により、この外観検査の自動化が進んでいます。
自動化された外観検査は、省人化によるコスト削減や検査精度の向上といった直接的なメリットだけでなく、品質の見える化を通じて工程そのものの改善にも大きく寄与します。 本記事では、外観検査の自動化による品質の見える化と、そのデータを活用した品質改善の流れを解説します。
品質の見える化と品質改善
品質改善を進めていくためには、現状の問題を定量的なデータで把握し、取得したデータをもとに改善の狙いどころを見定めることが大切です。現状を把握するために重要になってくる概念が「品質の見える化」です。
品質の見える化とは
品質の見える化とは、製品の品質状態を定量的なデータとして可視化することです。
例えば、「どんな」不良が「いつ」「どこに」「どれぐらい」発生したのか、といった情報がこれにあたります。
外観検査を自動化することによって、こういったデータを安定した基準で、継続的に収集することができるようになります。
品質の見える化の流れ
品質の見える化は次のような流れで実施します。
データ収集
製品の外観検査データを収集します。これには、画像データや検査結果の数値データが含まれます。
データ分析
収集したデータを解析し、欠陥のパターンや発生頻度を特定します。ここで、主成分分析や線形判別分析といったデータ分析手法が活用されます。
可視化
解析結果をグラフやチャートとして視覚化し、問題点を明確にします。これにより、製造プロセスのどこに改善が必要かを一目で把握できます。
見える化は一度実施して終わらせるのではなく、継続的に取り組みを続けることが大切です。外観検査の自動化を始めとする、様々なIoT技術を活用し、現状の品質データや製造データを常に可視化できるような体制と仕組みを構築していきましょう。
品質改善の流れ
品質の見える化を通じて可視化された現状に対して、具体的な改善策を講じていきます。次のようなステップで品質改善を進めていきます。
要因解析
見える化した品質データと、特性要因図やなぜなぜ分析のような要因解析の手法を用いて、問題の根本原因を特定します。
改善策の立案
特定された原因に基づき、具体的な改善策を立案します。
改善実施と評価
立案した改善策を実施し、再度データを収集します。データをもとに、改善効果が得られたかを評価します。
得られた定量的なデータと、製造現場に蓄積されたノウハウの両方を活用して、結論を導き出すことが大切です。
また、改善前と同様に、改善後も定量的なデータを取得します。両者を比較し、改善が妥当であったか、どれぐらいの効果があったのか、を振り返りましょう。
データ分析の手法

たくさんのデータを収集しても、そのデータを解釈することができなければ、利用することはできません。そのため、得られたデータを統計的な手法により分析することが不可欠です。ここでは、代表的なデータ分析の手法を紹介します。
主成分分析
主成分分析(PCA; Principal Component Analysis)は、多次元のデータの次元を削減し、低次元に変換するための手法です。主成分分析を用いることで、データの分散を最大化する方向(主成分)を見つけ出し、その方向を新たな軸とすることで、データの重要な情報を保持しながら次元を削減できます。
2次元や3次元といった、人が目で見て解釈しやすい次元数まで削減することで、分析や議論がしやすくなります。製造データや品質データに主成分分析を施すことで、どういった製造条件の違いが品質に影響を及ぼすかを可視化し、根本的な不良発生の原因を特定することに役立ちます。
分析のポイント
主成分分析の結果として得られる主成分は、元のデータ(観測変数)の線形結合で表されます。 次のようなポイントに着目して、この主成分を分析していきます。
固有値(Eigenvalue)と寄与率(Proportion of Variance)
主成分の固有値は、その主成分が元のデータをどれぐらい説明しているかを示すものです。固有値が大きいほど、その主成分はデータの特徴をよく表していると言えます。 また、各固有値を全固有値の合計で割ったものが寄与率です。例えば、第1主成分の寄与率が70%であれば、全体のデータのばらつきの70%を第1主成分が説明していることになります。
主成分負荷量(Principal Component Loading)
主成分負荷量は、主成分と各観測変数との相関係数のことです。主成分負荷量が大きいほど、その観測変数はその主成分に影響が大きいと言えます。
活用例
例えば、食品製造業界における製造データを主成分分析で解析する場合を考えてみましょう。ここでは、以下のような製造条件の項目があるとします。
温度
湿度
製造時間
圧力
これらの製造データに基づいて主成分分析を行った結果、次の結果が得られたとします。
第1主成分の寄与率が50%、第2主成分の寄与率が30%
第1主成分の主成分負荷量は「温度」と「湿度」が高く、第2主成分の主成分負荷量は「製造時間」と「圧力」が高い。
良品と不良品では、第1主成分の値が大きく異なる。
この場合、良品と不良品の違いは第1主成分の違いによって生まれる可能性が高く、また「温度」と「湿度」の主成分負荷量が高いことから、製造時の「温度」と「湿度」が不良品発生へ寄与している可能性が高い、ということがわかります。
主成分分析は、データの見える化と解析を効果的に行うための強力なツールです。主成分分析を活用することで、データに基づいた意思決定をより精度高く行うことができるでしょう。
線形判別分析
線形判別分析(LDA; Linear Discriminant Analysis)は、データの分類に特化した次元削減の手法です。異なるクラス(例えば正常品と不良品)間の分散を大きく、またクラス内の分散を小さくするように新しい軸を作成します。
これにより、クラス間の違いをよく表すような要因を分析し、また新しいデータが与えられたときに、そのデータがどのクラスに属すかを予測できます。
分析のポイント
線形判別分析の結果として、各クラスを分類する直線が得られます。 次のようなポイントに着目して、この結果を分析していきます。
判別関数
各クラスを分類する直線を表す判別式を、判別関数と言います。 判別関数は、元の変数の線形結合で表されます。各変数の重みを分析することで、分類に寄与する変数を特定できます。
活用例
ここでも、食品製造を例に考えてみましょう。 例えば、食品製造業界において、正常品と不良品のデータを線形判別分析で解析する場合を考えてみます。次のような製造条件の項目があるとき、
温度
湿度
製造時間
圧力
これらの製造条件に基づいて線形判別分析を行った結果、次のような結果が得られたとします。
正常品と不良品を分ける判別関数が得られた。
判別関数を見ると、「温度」と「湿度」の重みが大きくなっている。
得られた線形判別分析の判別関数を用いれば、製造時のデータを使って、正常品と不良品を分類できるようになります。
また、不良品の発生原因が製造時の温度と湿度の変化であることがわかります。そのため、これらの「温度と湿度の数値が安定するように製造条件を改善しよう」という意思決定にもつながります。
要因解析の手法

データ分析は、非常に強力なツールですが、利用方法を間違えると誤った結論を導き出してしまうこともあります。 結論が妥当なものかどうかは、その内容を原理・原則に基づいて判断する必要があります。 ここでは、原因分析に役立つツールをいくつか紹介します。
特性要因図
特性要因図は、問題の原因を体系的に整理するための手法です。魚の骨のような見た目をしていることから、フィッシュボーンチャートとも呼ばれます。この手法は、問題の根本原因を特定するのに役立つため、製造業における品質改善に広く活用されています。特性要因図は、問題を中心に置き、原因をカテゴリごとに分けて整理することで、視覚的に原因を把握しやすくします。
特性要因図の作成手順

特性要因図は次の手順で作成することができます。
問題の明確化
解決すべき問題を明確にし、図の「頭」に記入します。
主要カテゴリの設定
問題の原因を大きく分ける主要カテゴリを設定し、「大骨」として配置します。製造業の場合、4M (Man, Machine, Material, Method) などのフレームワークを活用するのも良いでしょう。
原因の洗い出し
各主要カテゴリに対して、具体的な原因を洗い出し、「中骨」として追加します。
原因の詳細化
各原因をさらに詳細に分析し、原因を細分化していきます。
原因の評価
洗い出した原因を評価し、最も影響の大きい原因を特定します。
以上のような手順を踏むことで、問題の原因を網羅的に列挙し、その中で重要な要因を特定することができます。
なぜなぜ分析
なぜなぜ分析(5Why分析)は、問題の根本原因を特定するためのシンプルで効果的な手法です。この手法は、問題が発生した理由を5回繰り返して問うことで、表面的な原因ではなく、根本的な原因を明らかにします。なぜなぜ分析は、特に製造業における品質改善やトラブルシューティングに有効です。
なぜなぜ分析の手順
問題の定義
解決すべき問題を明確にします。
最初の「なぜ」を問う
問題が発生した理由を問います。
次の「なぜ」を問う
最初の回答に対して、さらに「なぜ」を問います。
問いを繰り返す
この手順を5回繰り返し、根本的な原因に到達します。
原因の特定と対策
最終的に特定された根本原因に対して、対策を講じます。
なぜなぜ分析をすることで、問題の直接的な原因だけではなく、根本的な原因を抽出し、対策することができます。
データ分析と要因解析の活用
データ分析と要因解析は、組み合わせて使うと効果的です。 データ分析で得られた結果と、製造現場のノウハウをもとに要因解析を行えば、より確実性の高い結論に辿り着くことができるでしょう。
また、導き出された改善を実施し、それにより得られた品質データを解析することで、改善が妥当なものであったかを確かめることもできます。
データ分析と要因解析を組み合わせて使うことで、仮説の立案と検証のサイクルを効率よく回すことができます。
まとめ
本記事では、外観検査の自動化とその結果を活用した品質改善の方法について説明しました。検査結果をもとに、データ分析・要因解析することで、より効果的な品質改善策を素早く打ち出していくことができます。
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