注目のAIエージェントとは?製造業における活用方法をご紹介!

2025/06/30

AIエージェントとは

AIエージェントとは、「ある目的やタスクを達成するために、ある程度の自律性をもって環境とやり取りを行う人工知能システム」のことを指します。人間の「エージェント(代理人)」のように、指示を受けて行動したり、状況に応じて判断したりして、目標を遂行する存在です。


基本的な特徴

AIエージェントには次のような特徴があります。

特徴

説明

自律性

自ら判断して行動する(人間が逐一操作しなくてもよい)

目的志向性

あらかじめ与えられた目標に向かって動く

環境との相互作用

周囲の状況を観察し、行動を変えることができる

学習能力(ある場合)

経験から学び、行動を改善できる(例:強化学習)


AIエージェントの種類

種類

対話エージェント

ChatGPT、Siri、Alexa など

ゲームAIエージェント

将棋AI、チェスAI、強化学習によるゲームプレイヤー

ロボットエージェント

掃除ロボット、自動運転車など

ソフトウェアエージェント

Webスクレイピングや自動メール送信などの自動化Bot


実用例

  • ECサイトでのチャット対応(対話型エージェント)

  • スケジュール調整・メール返信(パーソナルAIアシスタント)

  • ゲームで敵の行動を制御するAI(敵エージェント)

  • 自律型ドローン(走行エージェント)


「AIモデル」と「AIエージェント」の違い

  • AIモデルは「ある特定の入力に対して適切な出力を返す機械学習システム(例:画像を分類するCNN)」

  • AIエージェントは「そのAIモデルを使って実際に環境とやり取りしながら動く実行体」

たとえば、GPT-4は「言語モデル」ですが、これを使って自律的にタスクをこなすように構成すれば「AIエージェント」になります。

製造業におけるAIエージェントの活用は、生産性向上・品質改善・コスト削減・安全性向上などに大きく貢献しています。以下に具体例を分野ごとに紹介します。


製造業でのAIエージェントの活用例

1. 予知保全(Predictive Maintenance)

  • 内容:機械のセンサー情報をもとに、故障の兆候をAIエージェントが検知し、適切なタイミングで修理を提案。

  • 効果:突発的なダウンタイムの回避、生産効率の向上。

  • ファナック日立製作所などがIoT+AIで実施。


2. 品質検査の自動化

  • 内容:カメラやセンサーの画像・データをAIエージェントがリアルタイムで解析し、不良品を自動検出。

  • 効果:検査精度の向上、人件費削減。

  • :外観検査、X線検査でAIによる不良判定。


具体的な外観検査の自動化の始め方については、下記記事をご参照ください。
参考:外観検査自動化の始め方

3. 自律搬送・ロボット制御(スマートファクトリー)

  • 内容:工場内での物の移動や組み立て工程で、AIエージェントがロボットやAGV(無人搬送車)を制御。

  • 効果:人手不足対策、24時間稼働の実現。

  • トヨタの生産ラインでの自動搬送車、アマダの板金加工ラインの自動化。


4. スケジューリング最適化

  • 内容:AIエージェントが生産スケジュールや資材の投入順を最適化。

  • 効果:生産効率アップ、納期遵守率向上。

  • :納期、在庫、設備稼働率を加味した動的スケジューリング。


5. エネルギー管理・省エネ

  • 内容:電力・ガスなどの使用量をAIエージェントがモニタリングし、自動調整により効率的な使用を促進。

  • 効果:コスト削減、脱炭素への貢献。

  • :工場のエアコン制御、ヒートポンプの最適運転。


6. 需要予測と在庫最適化

  • 内容:販売履歴や市場データを使って需要を予測し、材料調達や在庫管理に反映。

  • 効果:過剰在庫・欠品の回避、コスト削減。

  • :SCM(サプライチェーンマネジメント)への統合。


実装技術の例

技術名

用途例

コンピュータビジョン

品質検査・ロボット制御

機械学習(教師あり)

故障予測・需要予測

強化学習

AGVの自律経路探索

自然言語処理

作業マニュアルの理解・指示対応

マルチエージェントシステム

複数ロボットの協調動作


AIエージェントの導入ステップ

製造業におけるAIエージェントの導入ステップは、一般的なAI導入プロセスと共通する部分が多いですが、製造業特有の課題や機会を考慮する必要があります。以下に主要なステップを示します。

ステップ1:現状分析と目標設定

  1. 課題の特定と優先順位付け

     現在、どのような問題が製造プロセスで発生しているかを明確にする必要があります。例:生産性低下、品質不良、設備故障、サプライチェーンの非効率性など

    その中から、 AIエージェントが解決できる可能性のある課題をリストアップし、ビジネスインパクトに基づいて優先順位をつけます。
    例:生産計画の最適化、設備の予知保全、品質検査の自動化、サプライチェーンリスクの管理 など

  2. 目標の明確化
     AIエージェント導入によって何を達成したいのか、具体的な目標を設定します。SMART原則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいた目標が望ましいです。
    例:不良品率をX%削減する、設備稼働率をY%向上させる、生産リードタイムをZ日短縮する など

  3. 成功指標の定義
    目標達成度を測るための具体的な指標(KPI)を定義します。

ステップ2:データ収集と準備

  1. データソースの特定
    AIエージェントの学習に必要なデータがどこにあるかを特定します。例として、SCADAシステム、MES、ERP、IoTセンサーデータ、画像データ、過去の品質検査記録などが挙げられます。

  2. データ収集戦略の策定
    どのようなデータを、どのくらいの頻度で、どのように収集するかを計画します。

  3. データの前処理とクリーニング
    収集したデータには、欠損値、異常値、ノイズなどが含まれていることが多いため、AIエージェントが利用できるようにデータを整形します。これには、正規化、標準化、特徴量エンジニアリングなどが含まれます。

  4. データ統合
    異なるシステムやフォーマットのデータを統合し、一貫性のあるデータセットを構築します。

画像認識AI開発におけるデータ準備のコツについては、下記記事でもご紹介しています。
参考:AIが画像をもっと賢く学習するためのデータ増やしテクニック

ステップ3:AIエージェントの選定と開発

  1. ユースケースに合ったAIエージェント技術の選定
    目標とデータに基づいて、最適なAIエージェント技術(機械学習、深層学習、強化学習、ルールベースシステムなど)を選定します。
    例:予知保全には時系列データ分析、品質検査には画像認識、生産計画には強化学習など

  2. プロトタイプの開発
    小規模なデータセットや限定された範囲でAIエージェントのプロトタイプを開発し、PoC(概念実証)を行います。

  3. モデルの学習と評価
    収集したデータを用いてAIエージェントを学習させ、定義した成功指標に基づいて評価します。必要に応じてモデルのハイパーパラメータ調整や再学習を行います。

  4. エージェントの設計
    どのような「意思決定」をAIエージェントに行わせるのか、そのためのルールや行動ポリシーを設計します。

ステップ4:インフラストラクチャの構築

  1. ハードウェアとソフトウェアの準備
    AIエージェントの実行に必要なコンピューティングリソース(GPU、TPUなど)やソフトウェア環境(AIフレームワーク、ライブラリ)を準備します。

  2. データストレージと処理基盤
    大量のデータを効率的に保存、処理するためのデータレイクやデータウェアハウスを構築します。

  3. ネットワーク環境
    製造設備やセンサーとの間でAIエージェントとリアルタイムにデータを送受信でき、かつ信頼性の高いネットワーク環境を確保します(エッジコンピューティングの検討も重要)。

  4. セキュリティ対策
    AIシステムとデータのセキュリティを確保するための対策を講じます。

ステップ5:導入と統合

  1. システムとの統合
    開発したAIエージェントを既存の製造実行システム(MES)、監視制御システム(SCADA)、ERPなどと連携させます。API連携やミドルウェアの利用が考えられます。

  2. 段階的な導入
    いきなり全工程に導入するのではなく、一部のラインや設備で段階的に導入し、効果を検証しながら範囲を拡大します。

  3. 監視システムの構築
    AIエージェントの動作状況やパフォーマンスをリアルタイムで監視するシステムを構築します。

ステップ6:運用、監視、改善

  1. パフォーマンス監視
    導入後のAIエージェントのパフォーマンスを継続的に監視し、目標達成度を確認します。

  2. 定期的な再学習と更新
    製造環境の変化や新たなデータに基づいて、AIエージェントを定期的に再学習させ、精度を維持・向上させます。

  3. 異常検知とトラブルシューティング
    AIエージェントの予期せぬ動作やエラーを検知し、迅速に対処する仕組みを構築します。

  4. フィードバックループの確立
    現場からのフィードバックを収集し、AIエージェントの改善に活かします。

  5. スケーラビリティの確保
    将来的な拡張性を見据え、システムのスケーラビリティを確保します。

AIモデルの運用については、下記記事でも詳しくご紹介しています。
参考:AI (ディープラーニング) の運用における課題

ステップ7:人材育成と組織体制

  1. 専門人材の育成
    AIエージェントの運用・保守・改善を担当するデータサイエンティスト、AIエンジニア、現場のオペレーターなどの育成が必要です。

  2. 組織横断的な協力体制の構築
    IT部門、製造部門、品質管理部門など、関係部署が密に連携し、AIエージェントの導入と運用を推進する体制を構築します。

  3. チェンジマネジメント
    AI導入による業務プロセスの変化に対する従業員の理解と協力を得るためのチェンジマネジメントが重要です。

これらのステップを順に進めることで、製造業におけるAIエージェントの導入を成功させ、競争力向上に貢献することができます。

まとめ

日本のGDPの多くを占める製造業。今回は、その製造業で最近注目されている、AIエージェントの活用事例について紹介しました。

AIエージェントは、製造業において

  • 「人の判断が必要だった工程」や「生産プロセスの調整など最適化が難しい作業」

  • 「リアルタイムでの解析・判断が必要な作業」

などを自律的に担うことで、スマートファクトリー化の中核技術になっています。

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