
成功する物体検出モデルに欠かせないデータ分割の重要性
2024/11/21
物体検出(object detection)は、画像や動画内に映っている特定のクラス(人間・建物・車といったカテゴリー)の物体を検出する技術です。
画像や映像から特定の物体の位置、種類、個数などの情報を見つけ出すことを指し、その技術は、セキュリティ・医療・製造業など多岐にわたる分野で応用されています。

本記事では、物体検出のモデルを作るための学習の中で重要な役割を果たす「データの分割」について解説します。
物体検出におけるデータ分割の重要性
データ分割とは、モデルの学習過程において、データセットをトレーニング用(訓練)、バリデーション用(検証)、テスト用(評価)に分ける手法です。
具体的には、トレーニングデータでモデルを学習させ、バリデーションデータで性能を調整し、テストデータで最終的な評価を行います。このようにデータを分割することで、モデルが過学習(トレーニングデータに依存しすぎて、新しいデータに対しての汎化性能が低い状態)するのを防ぎ、現実のデータに対する精度を高めることができます。
データ分割の設計が不適切だと、モデルは偏ったデータに基づいて学習し、特定の状況や物体に対してのみ反応する「偏ったモデル」になってしまう可能性があります。物体検出の精度向上と安定した汎化性能を目指すため、適切なデータ分割が欠かせません。
物体検出のデータセットの特徴
物体検出のデータセットは、分類や回帰といった他のタスクに用いるデータセットとは異なる特徴があります。
物体検出では、画像に含まれる物体の位置とクラスを正確に把握する必要があるため、データセットには単なる「画像とラベル」のペアだけでなく、物体の位置情報やサイズも含まれています。
ラベル情報
物体検出データセットのラベルには、各物体の位置情報としてバウンディングボックス(Bounding Box)が付与されます。
バウンディングボックスの場合、一般的には物体の左上と右下の座標で表され、物体の位置とサイズを明確に示します。さらに、各バウンディングボックスにはクラスラベル(カテゴリ)が紐づけられ、検出した物体が何であるかを特定します。

データ量とその多様性
物体検出モデルは多種多様な状況での検出精度が求められるため、トレーニングには大量のデータが必要です。さらに、異なる角度や光の条件、背景など、さまざまな環境で撮影された画像が含まれることで、モデルが特定の条件に偏らずに汎用的な検出能力を持つように学習できます。
データの偏りとバイアス
物体検出のためのデータセットでは、特定の物体クラス(人、自動車、動物など)の出現頻度が高いと、モデルの学習が偏り、特定のクラスの検出精度が向上する一方で、他のクラスの精度が低下する可能性があります。このため、データセット内でクラスごとのバランスを考慮し、各クラスの代表例が十分に含まれるようにすることが重要です。
データのアノテーション
物体検出データセットのアノテーションは、各物体の位置を手動で指定する必要があるため、分類タスクと比べて非常に手間がかかります。また、アノテーションが間違っている場合、モデルの精度に大きく悪影響を与える可能性があります。
データ分割の基本的な考え方
物体検出モデルを効果的にトレーニングするためには、先に述べたとおりデータセットをトレーニング(train)、バリデーション(validation)、テスト(test)の3つに分割することが重要です。この分割は、モデルの学習と評価をバランスよく行うために必要であり、各分割の役割が明確に定義されています。
トレーニングデータ (Training Data)
トレーニングデータは、モデルを学習させるためのデータで、データセットの中で最も大きな割合を占めます。物体検出モデルは、トレーニングデータ内のバウンディングボックスやクラスラベルから学習を行い、画像内の物体の位置や種類を認識するための重みを更新します。トレーニングデータが多ければ多いほど、モデルはさまざまなパターンを学習し、より精度の高い予測が可能になります。
バリデーションデータ (Validation Data)
バリデーションデータは、モデルのチューニングやパラメータの最適化に使用されます。学習の過程でバリデーションデータを使用することで、過学習を防ぎ、モデルが新しいデータに対しても高い精度で予測できるように調整します。
テストデータ (Test Data)
テストデータは、モデルの最終的な性能を評価するためのデータです。モデルがトレーニングとバリデーションの全行程を終えた後に使用され、モデルが実際の未学習データに対してどの程度の精度で物体を検出できるかを確認します。テストデータの精度は、現実の環境下でのモデルのパフォーマンスを予測する指標になります。
分割比率の考え方
一般的な分割比率として、トレーニング:バリデーション:テストが80:10:10や70:15:15で分割されることが多いです。しかし、データ量やモデルの特性によってこの比率は柔軟に調整することが可能です。特に物体検出のように大量のデータが必要な場合は、トレーニングデータの割合を増やす一方で、バリデーションとテストデータの割合を小さくする場合もあります。
参考:https://www.stat.go.jp/teacher/dl/pdf/c4learn/materials/fourth/dai3.pdf
データの偏りを避けるための工夫
データ分割時に、特定の物体や条件(例えば、特定の背景、角度、光の条件など)に偏らないようにすることが重要です。偏りがあると、モデルが特定の条件に依存するようになり、汎化性能が損なわれるリスクがあります。
ランダムに分割することもありますが、物体検出の場合はクラスのバランスを考慮しながら分割を行う工夫が求められます。
物体検出のデータ分割における課題と対策
物体検出のデータ分割は、一般的な分類タスクのデータ分割と同様の原則を持ちながらも、特有の課題がいくつか存在します。この章では、物体検出におけるデータ分割の課題とそれに対する対策を解説します。これらの課題を理解し、適切に対応することで、モデルの性能を最大化し、より汎用性のある物体検検出モデルを構築することが可能になります。
データの偏りとその影響
物体検出データセットで、色や明るさといった背景条件に偏りがあると、モデルの精度低下の原因になりえます。例えば、データセット内の多くの画像において青色の背景が使用されている場合、白色や黒色の背景で物体検出を行うと、モデルの精度が落ちることがあります。
データの偏りを避けるためには、データ収集の段階でさまざまな環境、角度、物体サイズの画像を含めることが重要です。また、クラスごとのデータの量のバランスを保つように注意を払い、データセットを構成します。さらに、不足しているクラスや状況に対しては、データオーグメンテーション(Data Augmentation)を用いて疑似的にデータを増やす方法も効果的です。
スケールや解像度の違いによる問題
物体検出では、物体のサイズや解像度が異なる画像を扱う必要があります。例えば、遠くの小さい物体と近くの大きい物体の両方を正確に検出できるモデルを作るためには、様々なスケールの物体が含まれるデータセットが求められます。スケールが偏ると、モデルは特定のサイズや解像度での検出が得意になる一方で、異なるスケールでの検出精度が低下する可能性があります。
データセットに大小様々なサイズの物体が含まれるよう、収集段階で異なる距離や解像度での画像を取り入れることが重要です。加えて、データセットのスケールバランスを保つために、オーグメンテーションとしてスケーリング(拡大縮小)を施すことで、モデルが異なるスケールに適応できるように調整します。
クラスごとの画像枚数が不均衡になる問題
物体検出では、データセット内の物体クラスの出現頻度が偏ることがよくあります。例えば、動物のデータセットにおいて「犬」や「猫」の画像が多く、「鳥」や「魚」の画像が少ない場合、多く含まれるクラスの検出には強くなる一方で、出現頻度の少ないクラスの検出精度が下がってしまう可能性があります。
画像が少ないクラスがある場合、追加で画像を集めるか、生成系AIを利用して画像の生成を行うことも可能です。
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データ分割とモデルの汎化性能の関係性
物体検出のタスクにおいては、トレーニングデータのみでなく、実際の未学習データに対しても高い精度で検出ができることが目標です。データセットを適切に分割し、各データ群の役割を明確に分けることにより、モデルの汎化性能を維持し、偏ったモデルの生成を防ぎます。特に、過学習を防ぎ、汎化性能を最大限に発揮するためには、データ分割に工夫を凝らす必要があります。
汎化性能を高めるためのデータ分割の工夫
物体検出モデルが異なる環境や条件での検出精度を保つには、多様なデータの準備とデータ分割が必要です。特定の環境や条件に偏らない分割方法と、複数の検証データセットでの評価を組み合わせることで、モデルの汎化性能を確保しやすくなります。
一方で、物体検出を行う環境が安定している場合は、背景や照度などで複数の条件のデータを準備する必要はありません。
参考:AIが検査しやすい写真を撮ろう!外観検査のための照明の選び方
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