
安価なカメラと産業用カメラの違いとは?
2024/08/05
一口に「カメラ」といってもその種類や性能はさまざまです。数千円ほどで購入できる安価なものから数万円~数十万円、場合によっては数百万円の値段が付く高価なものもあります。
外観検査においては検査対象や検査環境に合わせて適切なカメラを選定することが重要です。
このような場面では特殊な状況に対応するため、一般に産業用カメラと呼ばれる機材を使用する場合もあります。本記事では産業用カメラの特徴について解説し、WEBカメラをはじめとする比較的安価なカメラとの違いを見ていきます。
産業用カメラの特徴
大きなセンサーサイズ
産業用カメラは、1/2インチセンサーや1インチセンサーなど大型のセンサーを使用している場合が多いです。そのため、より多くの光を集めることができ、周囲が暗い環境でも高画質で撮影できるというメリットがあります。一方でWEBカメラはコストを抑えるために1/3インチセンサーや1/4インチセンサーなどのより小型のセンサーを搭載しています。このようなセンサーでは十分な光を集めることが難しく、暗い環境に弱いため画質という面で劣ってしまいます。
グローバルシャッター
グローバルシャッターとローリングシャッターは、どちらもデジタルカメラのセンサーが画像を取得する方式の名前ですが、それぞれ別の特徴を持っています。
グローバルシャッター
グローバルシャッターはセンサーの全画素が同時に露光を開始・終了する方式です。画像全体が同じタイミングで撮影されるため動きの激しい物体でもゆがみが発生しにくいという特徴があります。そのため、あらゆるシャッター速度に対応できることが利点です。しかし、製造コストが高くなってしまうという弱点もあります。感度や画質、フレームレートなどの面でもローリングシャッターと比較すると劣る場合があるのも特徴です。
ローリングシャッター
一方のローリングシャッターは、全画素を同時に記録するのではなくセンサーの上から下へ(または左から右へ)順番に露光していく方式です。露光のタイミングが画素によって異なるため、動きのある被写体を撮影すると画像にゆがみが生じることもあります(例:動きの速い部分が歪んでいる画像)。このゆがみはジュロ効果やスキュー現象などと呼ばれ、動きの速い製造ラインなどの検査では致命的な弱点となる可能性もあります。一方で製造コストを抑えることができ、高感度・高画質・高フレームレートを実現しやすいことが特徴といえます。
産業用カメラは動きのある被写体でも正確な画像を取得するためにグローバルシャッターを採用している場合が多いです。一方、WEBカメラでは価格面での利点を優先し、ローリングシャッターが搭載されている場合がほとんどです。
しかし、近年では画素の読み出し速度の向上に伴い、ローリングシャッターの高画質性能を生かしつつ、グローバルシャッターに迫る性能を実現するカメラも増えてきました。センサー技術の進歩によってシャッター方式の画質差は徐々に縮まりつつあります。
交換可能なレンズ

産業用カメラには多様な撮影条件に対応するため、固定式のレンズではなく代わりにマウント(レンズとカメラの接続口)が装備されている場合があります。このマウントに撮影環境にあったレンズを付けることであらゆる環境に対応できるようになります。
画角の調整が可能
撮影範囲(画角)はカメラとレンズの距離やセンサーサイズ、レンズの焦点距離によって決まります。工場などでは検査スペースに制約があり、限られた空間で十分な撮影範囲を確保しなければならない場合もあります。適切な焦点距離のレンズを選定することで同じカメラ位置でも画角を自由に調整できるという利点があります。
解像度と歪曲収差を最適化できる
歪曲収差というのは、簡潔に述べるとカメラで撮影した画像のゆがみのことです。中央が膨らむように歪んでいたり(例:画像左)、四隅が不自然に暗くなっていたり(例:画像右)している画像を見たことはないでしょうか。ゆがみが少なく、画像のどの部分を見ても高解像度で撮影できるレンズを設計することは実は非常に難しいことです。

そのため多くのレンズメーカーは、同じようなスペックでもあっても解像度重視のレンズやゆがみを減らすことを重視したレンズをそれぞれ設計し、使用用途に応じて自由に選択できるようにしています。このように使用環境によって適切なレンズを選定し、利用できることも産業用カメラをはじめとしたレンズ交換式カメラの利点の一つといえます。
しかし当然ながら、このような場合はカメラ本体に加えてレンズも別で購入する必要があり、その分のコストがかかります。一方で、WEBカメラなどの安価なカメラでは、マウントを搭載しておらず、焦点距離などを変更できない固定式のレンズがあらかじめ埋め込まれています。
特殊な環境への対応が可能
検査対象の物体の形状によってはより特殊なレンズを用いる必要があります。
円筒形状のワーク(シャフト部品など)では、通常のレンズでは対象物の表面に陰影ができてしまい、正確な検査ができない場合があります。そこで、ラインセンサー用の細長い形状のレンズを用いることがあります。詳細は省略しますが、テレセントリックレンズや魚眼レンズなど、多くの特殊レンズが検査の用途に応じて利用されています。
将来的な拡張性
産業用カメラは長期間使用されることが多く、将来的な用途変更や技術革新に対応する必要があります。レンズ交換可能なカメラであれば、レンズを交換するだけで新しい用途や高性能化に対応できます。カメラ本体を交換せずに済むため、コストを抑えつつ長期的な運用が可能になります。
トリガー撮影
産業用カメラはトリガー機能や同期機能を備えており、特定のイベントや動作に合わせて撮影のタイミングを制御できるという特徴があります。照明のストロボ同期や生産ラインでのワークの通過に合わせた撮影などが可能です。
また、多くのメーカーはソフトウェア開発キット(SDK)を提供しており、これを使用して露光時間、ゲイン、ホワイトバランスなどのカメラパラメータを細かく設定できます(関連記事:外観検査で重要なカメラの設定)。それだけでなく、特殊な撮影シーケンスを実装したり、オーバーレイ画像の表示なども追加できる場合があります。
安価なカメラにはないこの特徴を生かし、検査の要件に合わせた専用システムを構築することもできます。
GigE(ギガビット・イーサネット)接続とUSB接続
ほとんどの産業用カメラメーカーではカメラの接続口(インターフェース)にGigE接続とUSB接続の両方を採用しています。産業用カメラを導入する際には用途に合わせてどちらのインターフェースを採用するかを決定する必要があります。
GigE接続カメラの特徴
産業用カメラを使用したことがない人にとってはGigE接続という言葉は耳慣れないかと思います。一番の特徴は、長距離伝送に対応しており最大100mまでのケーブル長に対応できるという点です。また、PoE(Power over Ethernet)によりデータ通信と電源供給を1本のケーブルで実現できます。一方でIPアドレスの割当てをはじめとしたネットワーク設定が必要となることや、一般的なGigE規格の転送速度が最大1Gbpsのため、解像度の高いカメラでは速度不足となる場合があることが短所です。
USB接続カメラの特徴
産業用カメラやネットワークに詳しくない人でもUSBケーブルを挿すだけですぐに利用できることが利点です。転送速度はUSB3.0で最大5Gbpsと高解像度・高フレームレートのカメラにも対応できます。しかしながら、最大数m程度のケーブル長(USB3.0でも5mまで)にしか対応できず、長距離での接続には適していません。また、GigE接続のカメラの場合はスイッチングハブを介して多数のカメラを接続できますが、USB接続では1対1接続が基本のため、PC側のUSBのポート数に制限されることが短所です。
一般的には、長距離伝送や多数カメラの接続が必要な場合はGigEが、手軽さや転送速度を重視する場合はUSBが選ばれる傾向にあります。ただし、高速化が進むUSB3.1/3.2や、10GigE以上の高速なGigE規格の登場により、両者の差は徐々に縮まりつつあるのが現状です。
GigE接続 | USB3.0接続 | |
|---|---|---|
転送速度 | 遅い | 速い |
ケーブル長 | 長い | 短い |
接続性 | ネットワーク機器の用意が必要 | 通常のUSB接続で使用可能 |
拡張性 | スイッチングハブを利用することで多数接続可能 | PCのUSBポート数に制限される |
安価なカメラとの比較
これまでの内容をまとめると次のようになります。
安価な(WEB)カメラ | 産業用カメラ | |
|---|---|---|
センサーサイズ | 小さい | 大きい |
シャッター方式 | ローリングシャッター | グローバルシャッター |
レンズ交換 | × | 〇 |
トリガー撮影やSDKの利用 | × | 〇 |
接続インターフェース | USB | GigE・USB |
価格 | 安価 | 高価 |
産業用カメラはあらゆる面でカスタマイズ性が高く高性能です。しかし、価格面ではやはり市販のWEBカメラが安価で導入しやすい傾向にあります。
また、すべての外観検査で産業用カメラが必要となるわけではなく、検査環境やワークによってはWEBカメラで十分な場合もあります。
最適なカメラの選び方
では、実際にはどのようなポイントに着目してカメラを選定すればよいのでしょうか。
特に注目するべきポイントを3点ご紹介します。
製品が流れる速さで選ぶ
ライン上を高速で製品が流れている場合、ローリングシャッター方式では画像のゆがみが大きいため安価なWEBカメラでは対応できない場合があります。そのような場合はグローバルシャッター方式を採用している産業用カメラを使用することが望ましいです。
そのほか、動きの速い対象物を撮影する際はフレームレート(1秒当たりのコマ数)にも着目する必要があります。接続方法で選ぶ
数台のカメラであればUSB接続でもGigE接続でも問題ありませんが、より多くのカメラをつなぐ場合はネットワーク機器を使用してデータを伝送できるGigE接続のカメラを選ぶとよいでしょう。また、伝送距離に関してもGigE接続の方が長距離を伝送できるという利点があります。解像度が高いカメラではやりとりすべきデータ量も多く、その場合は転送速度の速いUSBカメラに軍配が上がります。
画角で選ぶ
これはカメラの選定というよりもレンズの選定です。通常のWEBカメラで写し撮れる範囲で問題ない場合はあえてレンズ交換式のカメラを選ぶ必要はありません。
検査環境の制約などでワークとの距離が遠く、より望遠で撮影したい場合や、逆により広い範囲を一度に写したい場合は、適切な焦点距離のレンズを選定することで対応できます。
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